なぜ売上や利益だけでは資金ショートを防げないのか
売上が伸びていても、利益が出ていても、会社のお金が足りなくなることはあります。
その理由は、「売上・利益」と「実際に使える現金」は同じではないからです。
とくに小さな会社や個人事業では、月次で見る数字を間違えると、気づいたときには支払いが重なり、資金が一気に苦しくなることがあります。
将来の資金ショートを防ぐには、過去の成績表を見るだけでなく、これから先にお金が足りるかを月ごとに確認することが大切です。
以下では、初心者の方にもわかるように、「なぜ売上や利益だけでは不十分なのか」を順番に整理していきます。
黒字でも手元資金が足りなくなる理由
初心者の方がまず押さえたいのは、利益が出ていることと今使える現金があることは別だという点です。
たとえば、100万円の商品やサービスを売ったとしても、その代金がすぐ入金されるとは限りません。
請求書を発行して、入金は翌月末や翌々月末ということもよくあります。
一方で、会社の支払いは待ってくれません。
- 給与
- 外注費
- 家賃
- 通信費
- 広告費
- 税金
- 借入返済
- 社会保険料
これらは、売上金の入金前でも先に出ていくことがあります。
そのため、帳簿上では黒字でも、手元のお金だけを見ると足りないという状態が起こります。
わかりやすく整理すると、次のようになります。
| 項目 | 何を表すか | 注意点 |
|---|---|---|
| 売上 | 商品やサービスが売れた金額 | まだ入金されていないことがある |
| 利益 | 売上から経費を引いた結果 | 利益があっても現金があるとは限らない |
| 現金残高 | 今すぐ支払いに使えるお金 | 資金ショートを防ぐうえで最重要 |
つまり、会社を回すうえで本当に重要なのは、「いくら売れたか」だけでなく、「今いくら払えるか」です。
さらに注意したいのは、売上が伸びているときほど資金繰りが苦しくなることがある点です。
売上拡大に合わせて仕入れや外注費、採用費、広告費が先に増えると、入金より支払いのほうが先行しやすくなります。
この状態を放置すると、黒字なのに資金不足になる、いわゆる黒字倒産のリスクが高まります。
利益は会社の成績ですが、
現金は会社の体力です。
成績が良くても体力が尽きれば、支払いは続けられません。
だからこそ、売上や利益だけを見て安心しないことが重要です。
「過去の結果」ではなく「来月の不足」を見る発想が大切
月次管理でありがちなのが、
「先月は売上がよかった」
「今月は黒字だった」
と、終わった月の結果だけを見て安心してしまうことです。
もちろん、月次の実績確認は大切です。
ただし、資金ショートを防ぐ目的で考えるなら、もっと重要なのは来月以降にお金が足りるかどうかです。
なぜなら、資金ショートは「過去の数字」が原因で起こるのではなく、これから発生する入金と支払いのズレによって起こるからです。
たとえば、次のようなケースは珍しくありません。
- 今月は利益が出ている
- しかし来月は税金の納付がある
- さらに賞与や大きな外注費の支払いも重なる
- その一方で、大口の入金は翌々月になる
この場合、今月の決算や試算表がよく見えても、来月の資金は足りなくなる可能性があります。
ここで必要なのが、「結果を見る管理」から「先を読む管理」への切り替えです。
月次では、少なくとも次の視点を持つと、資金ショートをかなり防ぎやすくなります。
- 今月末に現金はいくら残るか
- 来月の入金予定はいくらか
- 来月の支払い予定はいくらか
- その差額で資金は増えるか減るか
- 2〜3か月先まで見ても危ない月はないか
この考え方ができるようになると、資金繰りはかなり変わります。
たとえば、来月に不足しそうだと早めにわかれば、次のような対応が取りやすくなります。
- 支払い時期を前倒しではなく調整する
- 不要な支出を止める
- 設備投資を一時的に後ろへずらす
- 取引先への請求や回収確認を早める
- 金融機関や資金調達先へ早めに相談する
逆に、足りなくなってから動くと、選べる手段は一気に減ります。
条件の悪い資金調達を選ばざるを得なくなったり、支払いの優先順位に追われたりして、経営判断が遅れやすくなります。
資金繰りで大切なのは、残高がゼロになってから考えることではありません。
まだ余裕がある段階で、来月・再来月の不足を先回りして見つけることです。
月次管理を後回しにすると起こりやすい失敗
月次管理が弱い会社では、資金ショートそのものだけでなく、その手前でいくつもの問題が起こりやすくなります。
代表的なのは、異変に気づくのが遅れることです。
たとえば、次のようなサインは本来、月次で気づけるものです。
- 売掛金の回収が遅くなっている
- 固定費が少しずつ増えている
- 粗利率が下がっている
- 借入返済の負担が重くなっている
- 特定の取引先への依存が強まっている
しかし、月ごとに数字を見ていないと、こうした変化は見逃されます。
すると、気づいたときには問題が大きくなっており、簡単には修正できなくなります。
また、月次管理を後回しにすると、経営判断が感覚に寄りやすくなります。
たとえば、
- 「たぶん今月は大丈夫だろう」
- 「売上があるから何とかなるはず」
- 「来月の入金で埋まるはず」
といった希望的観測で判断してしまうと危険です。
資金繰りは、感覚ではなく数字で見る必要があります。
さらに、月次管理が不十分だと、資金不足が起きたときに対応が後手に回ります。
ありがちな流れは次のとおりです。
- 通帳残高が思ったより少ない
- 急いで支払い予定を確認する
- 予想以上に出金が多いと気づく
- 慌てて借入や資金調達先を探す
- 条件比較が不十分なまま決めてしまう
この流れになると、資金繰りだけでなく、会社全体の意思決定も乱れやすくなります。
月次管理を後回しにすることの本当の怖さは、
お金が足りなくなることだけではなく、落ち着いて判断できる時間まで失うことにあります。
だからこそ、月次管理は経理の作業ではなく、経営の防災として考えるのがおすすめです。
毎月きちんと数字を見ていれば、
- 危ない月を早めに見つけられる
- 打ち手を複数の中から選べる
- 焦って不利な判断をしにくくなる
- 資金ショートの確率を下げられる
というメリットがあります。
とくに初心者のうちは、最初から細かい分析を完璧にしようとしなくて大丈夫です。
まずは、「利益が出ているか」だけでなく、「来月お金が足りるか」まで見ることを習慣にするだけでも、大きな一歩になります。
まず押さえたい、月次で確認する数字の全体像
資金ショートを防ぐために月次管理を始めようとすると、最初に迷いやすいのが
「結局、何を見ればいいのか」 という点です。
数字はたくさんありますが、最初から全部を追う必要はありません。
初心者のうちは、まず次の5つに整理すると考えやすくなります。
- 残高:今いくら持っているか
- 入金:これからいくら入ってくるか
- 支払い:これからいくら出ていくか
- 差額:入金と支払いの差はどうか
- 予測:来月以降に足りなくなる月はないか
この5つを毎月確認するだけでも、
「売上はあるのにお金が足りない」という状態にかなり早く気づけるようになります。
ポイントは、会計のための数字ではなく、資金が尽きないための数字として見ることです。
ここを意識するだけで、月次管理の精度は大きく変わります。
見るべき数字は「残高・入金・支払い・差額・予測」に分ける
月次で確認する数字は、バラバラに見るよりも、意味ごとにグループ化したほうが実務で使いやすくなります。
まずは、次の表のように整理するのがおすすめです。
| 分類 | 主に見る内容 | チェックする目的 |
|---|---|---|
| 残高 | 現預金残高、翌月繰越予定額 | 今の体力を把握するため |
| 入金 | 売掛金回収予定、現金売上、その他入金 | いつ・いくら入るかを見るため |
| 支払い | 買掛金支払、外注費、人件費、諸経費、税金、返済 | いつ・いくら出るかを見るため |
| 差額 | 月間の収支差額 | 資金が増える月か減る月かを知るため |
| 予測 | 来月・再来月以降の残高見込み | 危ない月を先回りで見つけるため |
この整理の良いところは、数字を追う順番が明確になることです。
おすすめの見方は、次の順番です。
- 今の残高を見る
- 今月から来月に入るお金を確認する
- 同じ期間に出ていくお金を確認する
- 差額を見て、残高がどう変わるかを確認する
- その流れを2〜3か月先まで伸ばしてみる
この順番で見れば、単に「今月は黒字だった」で終わらず、
「来月は足りるのか」「再来月が危ないのか」 まで把握しやすくなります。
特に重要なのは、入金と支払いを同じ土俵で見ることです。
売上だけを見ると安心しやすいのですが、資金繰りでは、
- 売上が立った日
- 請求した日
- 入金される日
- 支払う日
がそれぞれズレます。
そのため、売上の大小だけでなく、実際のお金の動きに置き換えて考えることが欠かせません。
💡初心者の方は、まず
「今あるお金」+「入る予定」−「出る予定」=月末に残るお金
という一番シンプルな形で考えると理解しやすいです。
数字が多く見えても、この基本式に戻れば混乱しにくくなります。
試算表と通帳だけでは見えない数字がある
月次管理というと、試算表を見れば十分だと思われがちです。
また、現金残高を確認するだけなら通帳で足りるようにも見えます。
ただ、資金ショートを防ぐという目的で考えると、試算表と通帳だけでは足りません。
なぜなら、この2つにはそれぞれ弱点があるからです。
まず、試算表はとても大切な資料ですが、基本的には発生ベースで数字を見ます。
つまり、「売上がいつ立ったか」「費用がいつ発生したか」はわかっても、
現金がいつ入るか、いつ出るか までは、そのままでは読み切れないことがあります。
一方、通帳は実際の入出金が見えるので現金の把握には役立ちます。
しかし通帳でわかるのは、あくまで起こったことが中心です。
通帳だけでは、次のような重要な情報が抜けやすくなります。
- まだ入金されていない売掛金
- 来月以降に支払う買掛金や外注費
- 税金や社会保険料の納付予定
- 借入返済の予定額
- 設備投資など臨時の支出予定
- すでに決まっているが、まだ通帳に出ていない入出金
つまり、
- 試算表は会社の成績を把握するのに強い
- 通帳は今ある現金を把握するのに強い
- でも、将来の資金不足を読むにはこの2つだけでは不十分
ということです。
だからこそ必要になるのが、
「今ある情報を、未来のお金の動きに変換する視点」 です。
たとえば、試算表に売掛金が載っていたとしても、重要なのは金額だけではありません。
- いつ回収される予定か
- 予定どおり入る可能性が高いか
- 特定の取引先に偏っていないか
といった点まで見て、初めて資金管理に使える数字になります。
同じように、支払い側も
- 今月の経費総額
- 来月支払う買掛金
- 毎月固定で出ていく費用
- 一時的に増える予定の出費
まで整理しないと、月末残高は正しく読めません。
試算表=過去から今を理解する材料
通帳=現在地を確認する材料
資金繰りの予測表=未来を読む材料
この3つは役割が違います。
初心者の方ほど、試算表か通帳のどちらか一方に寄りがちですが、
資金ショートを防ぐには、未来の予定を別で見える化することが大切です。
月末時点の実績より“着地見込み”を重視する
月次管理でありがちな失敗のひとつが、
月末が終わってから実績を見るだけになってしまうことです。
もちろん、月末実績の確認は必要です。
ただし、資金ショートを防ぐという観点では、それ以上に重要なのが着地見込みです。
着地見込みとは、簡単にいえば
「このままいくと、今月末や来月末に資金がどうなりそうか」
を途中の段階で予測することです。
たとえば、月の半ばの時点で次のようなことが見えていれば、行動が早くなります。
- 月末までに入るはずの入金が遅れそう
- 想定より外注費が増えそう
- 臨時の支払いが追加されそう
- 返済や税金で想定以上に資金が減りそう
こうした情報を月末まで待たずに反映できれば、対策も前倒しで打てます。
着地見込みを重視するメリットは大きく3つあります。
1. 異変に早く気づける
実績が確定してからでは遅いことでも、見込み段階なら修正できます。
2. 打ち手を選ぶ時間ができる
支出の見直し、請求の前倒し、入金確認、資金調達の相談などを落ち着いて進めやすくなります。
3. 月末の通帳残高に振り回されにくくなる
一時的に残高が多く見えても、月末に大きな支払いがあるなら安心はできません。
逆に、今は少なく見えても大型入金が確定していれば、過度に焦らずに済みます。
着地見込みを作るときは、難しく考えなくて大丈夫です。
まずは次の3点だけでも十分です。
- 今月末の現預金見込み
- 来月の入金予定合計
- 来月の支払い予定合計
この3つを毎月更新するだけでも、資金の見え方は大きく変わります。
さらに慣れてきたら、
- 予定と実績のズレ
- 売掛金の回収遅れ
- 支払いの前倒し・後ろ倒し
- 季節要因による売上の波
- 税金や賞与などの大型支出月
まで織り込めるようになると、より実践的です。
ここで大事なのは、完璧な予測を目指しすぎないことです。
資金繰りの予測は、100%当てることよりも、危ない月を早めに察知することに意味があります。
多少のズレがあっても、
- 今のままだと減りそうか
- どの月が一番薄くなるか
- 何月までに手を打つべきか
が見えれば、実務上は十分役に立ちます。
📌 月次管理では、
「月末にどうだったか」より「月末にどうなりそうか」
を先に見る習慣をつけるのがおすすめです。
この発想が身につくと、数字は単なる記録ではなく、
経営判断のための早期警報として使えるようになります。
将来の資金ショートを防ぐために月次で見たい数字9つ
月次管理で大切なのは、数字をたくさん集めることではありません。
「資金が薄くなる前に気づける数字」を、毎月同じ目線で見ることです。
特に初心者のうちは、損益計算書の利益だけを追うのではなく、現金の増減に直結する数字を優先して確認するのがおすすめです。
ここでは、将来の資金ショートを防ぐために、月次で見ておきたい数字を9つに絞って解説します。
1. 月末の現預金残高
月次管理の出発点になるのが、月末時点で実際に手元に残っているお金です。
会社の体力を最もシンプルに示す数字なので、まず最初に確認したい項目です。
残高の多い少ないではなく前月からの増減で見る
現預金残高は、単月だけで見ると判断を誤りやすい数字です。
大切なのは、「今いくらあるか」だけでなく、前月より増えたのか減ったのかです。
たとえば、月末残高が300万円あっても、
- 先月は450万円あった
- その前は600万円あった
という流れなら、資金はかなり早いペースで減っています。
この場合は「まだ300万円ある」ではなく、減少傾向が続いていることを問題視するべきです。
月次では、残高そのものよりも、
3か月連続で減っていないか
減るスピードが速くなっていないか
を見る習慣をつけると、危険サインを早くつかめます。
一時的に増えて見える月の落とし穴を知る
月末残高は、見た目が良くても安心できないことがあります。
たとえば次のようなケースです。
- 借入金の入金があった
- 大口の前受金が入った
- 税金や賞与の支払いが翌月にずれている
- 一時的に仕入や外注費の支払いが遅れている
このような月は、通帳残高だけ見ると余裕があるように見えます。
しかし実際には、翌月にまとめて資金が出ていく前触れかもしれません。
そのため、月末残高は「残っている金額」ではなく、
何によって残っているのか
まで確認することが大切です。
2. 3か月先までの予定資金残高
資金ショートを防ぐうえで非常に重要なのが、未来の残高見込みです。
今月の結果だけでなく、少なくとも3か月先まで見ておくと、打ち手を選びやすくなります。
最も資金が薄くなる月を先に見つける
予測を見るときは、毎月の残高を平均的に眺めるのではなく、
一番危ない月はいつか を探すことがポイントです。
たとえば、
- 4月末:250万円
- 5月末:180万円
- 6月末:40万円
という見込みなら、6月が要注意です。
このように、将来の資金残高を並べると、どの月で資金が細るかが見えてきます。
実務では、問題が起きる月を見つけてから対策するのでは遅いことが多いです。
早い段階で危ない月を特定しておけば、支出調整や資金調達の相談も落ち着いて進められます。
「今は大丈夫」でも先で足りなくなるケースに注意する
資金繰りが悪化する会社に多いのが、
今月の残高だけ見て安心してしまうことです。
たとえば今月は問題なくても、
- 来月に税金の納付がある
- 再来月に賞与支給がある
- 大口入金が予定より遅れそう
- 設備投資や更新費用が控えている
といった事情があるなら、先で急に厳しくなることがあります。
月次では、
「現在の安全」より「近い将来の不足」
を重視するほうが、資金ショート防止には役立ちます。
3. 今月の入金予定額
売上高ではなく、今月中に本当に入ってくる予定の金額を把握することが大切です。
資金繰りに必要なのは、会計上の売上ではなく、実際の入金です。
売上高ではなく実際に入ってくる金額を把握する
売上が大きくても、回収が翌月以降なら今月の資金には使えません。
そのため、月次では「今月の売上」よりも、今月の回収予定額を優先して見ます。
特に確認したいのは次の3つです。
- すでに請求済みで入金予定のもの
- まだ請求前だが今月中に回収見込みのもの
- 遅延リスクがある入金
この整理をしておくと、
「売上は立っているのに通帳が増えない」
という状態の原因が見えやすくなります。
入金予定日ベースで見る習慣をつける
入金予定額は、月単位だけでなく、予定日ベースでも確認するのがおすすめです。
理由は、月の前半に入る予定なのか、月末ぎりぎりなのかで資金繰りの余裕が大きく変わるからです。
たとえば、同じ300万円の入金予定でも、
- 10日に入る300万円
- 30日に入る300万円
では、支払いへの使いやすさがまったく違います。
特に支払いが集中する会社は、月合計だけでなく
いつ入るか
まで見ておくと、資金ショートの見落としを減らせます。
4. 売掛金残高と回収サイト
売掛金は、将来入る予定のお金です。
ただし、回収まで時間がかかるほど、資金繰りは苦しくなりやすくなります。
請求額が増えても回収が遅いと資金は楽にならない
売上拡大中の会社ほど注意したいのが、売掛金の増加です。
請求額が増えること自体は悪くありませんが、回収が遅ければ、その間は資金が寝たままになります。
たとえば、売上は伸びているのに資金が苦しい場合は、
- 売掛金が増えすぎていないか
- 回収サイトが長くなっていないか
- 以前より入金が遅れていないか
を点検する必要があります。
売上増=資金余裕とは限りません。
回収までの期間が伸びると、成長と同時に資金負担も大きくなります。
取引先ごとの入金遅れや偏りも確認する
売掛金は総額だけでなく、中身を見ることが大切です。
特に次の状態は注意が必要です。
- 大口取引先1社に偏っている
- 特定先だけ毎回入金が遅い
- 条件変更で回収サイトが延びた
- 入金予定日を過ぎても未回収が増えている
このような偏りがあると、1社の遅れがそのまま資金ショートの引き金になることがあります。
月次では、売掛金を「合計」で見るだけでなく、
誰から、いつ、いくら回収するか
まで整理しておくと安全です。
5. 今月から来月にかけての支払予定額
資金繰り悪化の原因は、入金不足だけではありません。
出ていくお金がどの月に集中するかも重要です。
給与・家賃・税金・賞与・外注費の集中月を把握する
支払いの中でも、特に見落としやすいのが、毎月ではない大きな支出です。
たとえば、
- 消費税や法人税などの納付
- 賞与
- 社会保険料の増加
- 更新料や保険料
- 一時的な外注費増加
こうした支出は、普段の月より一気に資金を減らします。
そのため、今月だけでなく、来月まで含めた支払い総額で見ることが重要です。
支払い日が重なるタイミングを先回りして見る
支出は合計額だけでは不十分です。
いつ出ていくのかも確認しないと、残高不足を起こしやすくなります。
たとえば、月末付近に
- 給与
- 外注費
- 家賃
- 借入返済
が重なる会社では、数日違うだけで資金の厳しさが変わります。
そのため、支払い予定は
金額 × 支払日
のセットで見ておくと実務的です。
6. 固定費の総額
固定費は、売上が減っても簡単には下がりにくい支出です。
だからこそ、月次で必ず把握しておきたい数字です。
手元資金が固定費の何か月分あるかで考える
固定費の総額がわかると、手元資金の安全度を把握しやすくなります。
たとえば、毎月の固定費が150万円で、現預金が450万円なら、単純計算で3か月分です。
もちろん実際には入金もあるため単純ではありませんが、
この見方をすると、現金残高の意味が一気にわかりやすくなります。
初心者の方は、残高を絶対額で見るより、
固定費の何か月分を持っているか
で考えると危機感を持ちやすくなります。
固定費がじわじわ増えていないかを点検する
固定費の怖いところは、急増よりもじわじわ増えることです。
たとえば、
- 人件費の増加
- サブスクの積み上がり
- 広告費の固定化
- 車両費やリース料の増加
- オフィス関連コストの膨張
このようなコストは、1か月では大きく見えなくても、半年で見ると重くなっていることがあります。
月次では、「今月いくらか」だけでなく、
3か月前・半年前と比べて増えていないか
まで見るのがおすすめです。
7. 本業で残るお金
ここで見たいのは、会計上の利益そのものより、本業の回転の中で実際に現金が残っているかです。
粗利だけで安心せず営業活動で資金が残るかを見る
粗利が出ていても、
- 売掛金が増えている
- 在庫が増えている
- 外注費や人件費が先に出ている
という状態なら、現金は残りません。
そのため、月次では
本業で入ったお金 − 本業で出たお金
の感覚で見ることが大切です。
完璧なキャッシュフロー計算書でなくても、まずは
- 入金
- 仕入
- 外注費
- 人件費
- 販管費
を並べて、営業で現金が残っているかを見れば十分役立ちます。
利益率の低下が資金繰りに与える影響を確認する
利益率が少し落ちるだけでも、資金繰りへの影響は意外と大きいです。
なぜなら、粗利が薄くなると、固定費や返済を吸収する余力が小さくなるからです。
たとえば、売上は横ばいでも、
- 値引きが増えた
- 原価が上がった
- 外注比率が高まった
という状態なら、資金が残りにくくなります。
売上だけを見ると見逃しやすいので、
「売れているか」ではなく「残っているか」
まで確認しましょう。
8. 借入返済額と返済負担
借入は資金繰りを助ける一方で、返済が始まると毎月の資金流出になります。
そのため、返済額は必ず月次で確認したい数字です。
本業で生んだお金で返済をまかなえているか確認する
返済が問題になるのは、借入があること自体ではありません。
本業で生んだお金で返せているかが重要です。
もし返済のために
- 別の借入で埋めている
- 現預金を減らし続けている
- 支払いを後ろ倒しにしている
という状態なら、資金繰りは不安定になりやすいです。
月次では、返済額を単独で見るのではなく、
本業で残るお金とのバランス
で確認するのがポイントです。
返済のために現金が減り続ける状態を見逃さない
借入返済は、利益計算上の費用とは一致しないため、損益だけ見ていると重さを見落としがちです。
特に元金返済は、利益より先に現金を減らします。
そのため、毎月の返済後に現金残高が減り続けているなら、
「利益は出ているから大丈夫」ではなく、
返済負担が資金繰りを圧迫している可能性 を考える必要があります。
9. 在庫・前払い・立替など現金化しにくい項目
最後に見たいのが、お金を使っているのに、すぐ現金に戻らないものです。
この項目は、売上や利益だけでは見落としやすい部分です。
売上拡大の裏で資金が寝ていないかを見る
在庫、前払費用、立替金などは、通帳から見るとすでにお金が出ています。
しかし、すぐに売上回収や現金化につながるとは限りません。
たとえば、
- 在庫を多く持ちすぎている
- 前払いが増えている
- 立替金の精算が遅れている
という状態では、現金が思った以上に拘束されます。
売上が伸びている会社でも資金が苦しいときは、こうした寝ているお金が増えていることがあります。
成長しているのに苦しい会社に多いパターンを知る
成長局面では、
- 仕入れが先に増える
- 在庫を厚めに持つ
- 外注費や採用費が先に出る
- 売掛金の回収は後からになる
という流れが起こりやすくなります。
つまり、数字上は前向きに見えても、資金面では苦しくなりやすいのです。
このパターンを知っておくと、
「忙しいのにお金が残らない」
理由を見つけやすくなります。
月次では、在庫や前払いを単なる補助科目として流すのではなく、
現金を縛っていないか
という視点で確認することが大切です。
数字をどう読むと危険サインを早く見つけられるのか
月次で数字を確認していても、見方を間違えると異変を見逃します。
大切なのは、数字を点で見るのではなく、流れとズレで読むことです。
たとえば、月末残高だけを見て「今月はまだ大丈夫」と判断すると、来月以降の不足に気づきにくくなります。
逆に、推移や差分を押さえておけば、資金ショートの前兆はかなり早い段階で見つけられます。
ここでは、初心者の方でも実践しやすい「数字の読み方」を3つに分けて解説します。
単月の数字だけでなく3か月推移で確認する
資金繰りの異変は、1か月分の数字だけでは見えにくいことがあります。
そのため、月次管理では単月の結果に加えて、最低でも3か月分の流れを見ることが大切です。
たとえば、月末の現預金残高が次のように推移しているとします。
| 月 | 月末残高 |
|---|---|
| 1月 | 420万円 |
| 2月 | 360万円 |
| 3月 | 290万円 |
3月だけを見れば「290万円ある」と思うかもしれません。
しかし、3か月で見ると、残高が連続して減っていることがわかります。
このような状態は、今すぐ資金ショートしなくても、近いうちに苦しくなるサインです。
3か月推移で見るメリットは、主に次の3つです。
- 一時的な増減に惑わされにくい
- じわじわ悪化している傾向をつかみやすい
- 改善しているのか、悪化しているのかを判断しやすい
特に注意したいのは、月単位では問題なさそうでも、3か月で見ると悪化しているケースです。
よくあるのは、売上は維持できているのに、
- 売掛金の回収が遅くなっている
- 外注費や人件費が増えている
- 税金や返済の負担が重くなっている
といった理由で、現金だけが少しずつ減っているパターンです。
このような変化は、単月では「誤差かな」と流してしまいがちです。
しかし3か月並べると、偶然ではなく傾向だと気づきやすくなります。
見る項目は多くなくて大丈夫です。
まずは次の数字だけでも、毎月3か月分並べてみてください。
- 月末の現預金残高
- 入金予定額
- 支払予定額
- 売掛金残高
- 固定費総額
この5つを並べるだけでも、危険サインはかなり見つけやすくなります。
💡 実務では、
「今月どうだったか」より「3か月でどう動いているか」
を先に見るほうが、早めの対応につながります。
前月比・前年差・計画差の3つでズレを把握する
数字を読むときは、金額そのものだけでなく、何と比べてどうズレたかを見ることが重要です。
とくに月次管理では、次の3つを押さえておくと判断しやすくなります。
| 比較のしかた | 見る意味 | つかみやすい異変 |
|---|---|---|
| 前月比 | 直近の変化を見る | 急な悪化、増えすぎ・減りすぎ |
| 前年差 | 季節要因を踏まえて見る | 毎年の波か、今年特有の問題か |
| 計画差 | 想定とのズレを見る | 予測ミス、回収遅れ、支出増加 |
まず、前月比は一番わかりやすい見方です。
先月より現預金が減っている、支払いが増えている、売掛金が膨らんでいる、といった直近の変化をつかめます。
ただし、前月比だけだと、季節要因に弱いという欠点があります。
たとえば、年末商戦や決算月などは、毎年数字が大きく動くことがあります。
そこで役立つのが前年差です。
前年同月と比べれば、
- 例年どおりの動きなのか
- 今年だけ悪くなっているのか
- 繁忙期なのに数字が弱いのか
が見えやすくなります。
さらに重要なのが計画差です。
これは、「こうなるはずだった」という見込みと、実際の数字との差を見る考え方です。
たとえば、
- 入金予定300万円 → 実績240万円
- 支払予定180万円 → 実績220万円
という結果なら、資金が苦しくなった原因はかなり明確です。
つまり、入金が想定より少なく、支払いが想定より多かったということです。
資金繰りで本当に危ないのは、数字が悪いことそのものより、
ズレの原因がわからないまま放置されることです。
そのため、月次では次のように読むと実践的です。
- 前月比で「直近の異変」をつかむ
- 前年差で「季節要因かどうか」を切り分ける
- 計画差で「なぜズレたか」を特定する
特に初心者の方は、最初から細かい分析をしなくても構いません。
まずは、各項目に対して
- 先月よりどうか
- 去年の同じ月よりどうか
- 予定と比べてどうか
の3つを横に並べるだけでも、数字の見え方がかなり変わります。
📌 危険サインを見つけやすいのは、
「金額の大きさ」より「想定と違う動き」
を見たときです。
残高より先に入金と支払いのズレを見る
資金繰りで最もよくある見落としは、残高だけ見て判断してしまうことです。
もちろん、月末の現預金残高は重要です。
ただし、危険サインを早く見つけたいなら、先に見るべきなのは入金と支払いのタイミングのズレです。
なぜなら、資金ショートは残高そのものより、
入る予定と出る予定がかみ合わないことで起こるからです。
たとえば、月末残高が200万円あったとしても、
- 25日に給与支払い
- 27日に外注費支払い
- 30日に家賃と返済
- 大口入金は翌月5日
という状況なら、月末前に資金が足りなくなる可能性があります。
このように、残高だけでは「一見大丈夫」に見えても、入金と支払いの日付を並べると危険が見えることがあります。
特に確認したいズレは、次の3つです。
- 売上計上日と入金日のズレ
- 仕入・外注発生日と支払日のズレ
- 大口入金と大口支払いが重なるタイミングのズレ
このズレが広がるほど、資金繰りは苦しくなりやすくなります。
実務では、次のような見方をするとわかりやすいです。
見る順番の例
- 今月の入金予定日と金額を並べる
- 今月の支払い予定日と金額を並べる
- どの日に残高が一番薄くなるかを見る
- 予定どおり入らない場合の余裕も考える
この順番で見れば、月末残高だけではわからない危険に気づけます。
また、入金と支払いのズレを見るときは、合計額だけでなく、大口案件の影響も確認しておくと安心です。
たとえば、1社からの入金遅れで資金繰りが一気に悪化する状態なら、その時点で構造的なリスクがあります。
つまり、危険サインを早く見つけるコツは、
「残高はいくらか」ではなく「いつ入って、いつ出ていくか」
を先に押さえることです。
残高は結果ですが、
入金と支払いのズレは原因です。
原因が見えれば、対策も早く打てます。
月次でこんな変化が出たら資金ショート予備軍
月次で数字を見ていると、いきなり資金ショートになるというより、その前に小さな異変がいくつも出ていることがよくあります。
問題は、その変化を「たまたま今月だけ」と片づけてしまうことです。
資金繰りの悪化は、急に起こるというより、
現金が増えない
回収が遅れる
固定費が重くなる
返済が効いてくる
依存先が偏る
といった変化が重なって進むケースが少なくありません。
ここでは、月次で特に注意したい5つの危険サインを、初心者にもわかりやすく整理します。
売上はあるのに現金残高が増えない
これは、かなり典型的な危険サインです。
売上が出ているのに月末の現預金が増えない場合、利益と現金の間にズレが生じている可能性があります。
よくある原因は次のとおりです。
- 売掛金の回収が遅い
- 仕入や外注費の支払いが先行している
- 在庫や前払いが増えている
- 借入返済で現金が減っている
- 税金や賞与などの大きな支出が重なっている
このときに大切なのは、
「売上があるから大丈夫」ではなく、「なぜ現金が残らないのか」 を確認することです。
たとえば、売上が前年より増えているのに、月末残高が横ばいか減少しているなら、事業のどこかでお金が詰まっています。
数字が悪いのではなく、お金の流れが悪いという見方が必要です。
月次では、売上高だけでなく、次の3つをセットで見るのがおすすめです。
| 確認したい項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 売上高 | 前月比・前年同月比で伸びているか |
| 月末現預金 | 売上の伸びに対して残高が増えているか |
| 売上債権・支払い | 回収遅れや支払い先行が起きていないか |
この3つがかみ合っていないときは、資金ショートの入口に入っている可能性があります。
売掛金ばかり増えて入金が追いつかない
売掛金が増えること自体は、売上が伸びている局面では自然なこともあります。
ただし、回収のスピードより売掛金の増え方が速いなら要注意です。
売掛金が膨らむということは、帳簿上では売上になっていても、
まだ現金になっていないお金が増えているということです。
とくに危険なのは、次のような状態です。
- 請求額は増えているのに通帳残高が増えない
- 入金サイトが以前より長くなっている
- 入金予定日を過ぎても未回収が残る
- 売掛金総額が毎月ふくらみ続けている
この状態を放置すると、黒字でも資金繰りが苦しくなります。
売掛金は将来入る予定のお金ですが、今日の支払いには使えません。
また、売掛金は総額だけでなく、回収先ごとの偏りも見ておきたいところです。
特定の取引先への請求が大きいほど、1社の遅れが全体の資金繰りに与える影響も大きくなります。
初心者の方は、月次で次のような表を作っておくと見やすくなります。
- 取引先名
- 請求金額
- 入金予定日
- 実際の入金日
- 遅れの有無
これだけでも、資金繰りの異変にはかなり早く気づけます。
固定費が上がったのに利益率が戻らない
固定費は、一度上がると下げにくい支出です。
そのため、固定費が増えたあとに利益率が戻らない状態は、じわじわ資金を削る危険サインです。
たとえば、次のような固定費は増えやすい一方で、簡単には減りません。
- 人件費
- 家賃
- サブスク費用
- リース料
- 広告の固定出稿
- 車両費や管理費
売上が伸びている間は目立ちにくいですが、利益率が下がると固定費の重さが一気に効いてきます。
すると、帳簿上は赤字でなくても、毎月残る現金が薄くなる状態が続きます。
特に注意したいのは、次のパターンです。
- 売上は前年並みまで戻った
- でも利益率は戻っていない
- そのまま固定費だけ高止まりしている
この場合、以前と同じ売上があっても、会社に残るお金は少なくなります。
つまり、過去と同じ売上でも安心できないということです。
月次では、固定費総額だけでなく、
- 固定費 ÷ 売上高
- 固定費 ÷ 粗利
- 固定費が何か月連続で増えているか
まで見ると、危険サインがはっきりします。
返済負担が重く、本業の稼ぎで吸収できない
借入は事業に必要な資金を確保するための手段ですが、返済が始まると毎月の現金流出になります。
そのため、返済負担が本業の稼ぎより重くなってくると、資金繰りは急に苦しくなります。
ここで大切なのは、
借入があること自体ではなく、
本業で生んだお金で返済できているか です。
危険なのは、次のような状態です。
- 返済後に現金残高が毎月減る
- 利益は出ているのに通帳残高が減る
- 返済資金を別の借入で埋めている
- 支払いを後ろ倒しにして資金をつないでいる
この状態が続くと、表面上は回っていても、中身はかなり不安定です。
元金返済は損益計算書では見えにくいため、利益だけを見ていると見落としやすい点にも注意が必要です。
月次では、次の見方をしておくと判断しやすくなります。
| 見る項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 毎月の返済額 | 前年や前月と比べて重くなっていないか |
| 返済後の残高 | 返済後に資金がどれくらい残るか |
| 本業で残るお金 | 返済を事業収入で吸収できているか |
返済がある会社ほど、利益より先に現金を見ることが重要です。
大口取引先への依存が高まりすぎている
売上の中心になる取引先があること自体は悪いことではありません。
ただし、特定の1社や数社への依存が強すぎると、資金繰りは一気に不安定になります。
たとえば、大口取引先への依存が高い会社では、次のようなことが起こると資金繰りが急変しやすくなります。
- 発注量が減る
- 入金が遅れる
- 支払条件の見直しを求められる
- 取引停止になる
- 値下げ要請を受ける
このリスクが大きいのは、売上だけでなく、回収の安全性まで1社に左右されるからです。
特に月次で見たいのは、次のような状態です。
- 上位1社の売上比率が高すぎる
- 上位数社で売上の大半を占めている
- 大口先の回収サイトが長い
- その取引先の入金遅れが全体に影響する
売上が大きい取引先は心強く見えますが、依存度が高すぎると、会社の資金繰りは脆くなります。
そのため、月次では売上総額だけでなく、販売先の偏りも確認することが大切です。
初心者の方は、まず次の2点だけでも十分です。
- 売上上位3社で全体の何%を占めるか
- そのうち1社が遅れたら資金繰りに耐えられるか
この問いに不安があるなら、すでに資金ショート予備軍の入口にいる可能性があります。
数字が悪化した月に早めに打ちたい対策
月次の数字が悪化したときに大切なのは、慌ててお金を集めることだけに走らないことです。
本当に必要なのは、資金が減る原因を分けて考え、すぐ動ける対策から順番に打つことです。
特に初心者の方は、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 入るお金を早められないか
- 出るお金を遅らせたり減らせないか
- 今すぐでなくてよい支出はないか
- 不足分をどう安全に埋めるか
この流れで対応すれば、場当たり的な対処になりにくく、資金ショートの確率を下げやすくなります。
入金条件と支払条件を見直す
数字が悪化した月に、まず見直したいのは入金と支払いの条件です。
なぜなら、利益率をすぐに変えられなくても、お金が動くタイミングは比較的調整しやすいからです。
たとえば、次のような見直しは現実的です。
- 請求書の発行日を早める
- 検収後すぐ請求できる流れに変える
- 入金サイトが長い取引先に条件相談をする
- 分割入金や前受金の交渉を検討する
- 仕入先や外注先の支払い条件を再確認する
- 一時的に支払日を分散できないか相談する
特に小規模事業では、数日〜数週間のズレでも資金繰りへの影響が大きくなります。
そのため、金額の大きさだけでなく、いつ入って、いつ出るのかを見直すことが大切です。
ポイントは、単に「待ってほしい」とお願いするのではなく、
資金計画を数字で示したうえで相談することです。
数字をもとに話したほうが、取引先にも説明しやすく、社内でも判断しやすくなります。
固定費と不要な支出をいったん整理する
数字が悪くなった月ほど、固定費の重さがはっきり表れます。
一度増えた固定費は放置すると毎月効いてくるため、早めの見直しが重要です。
まず整理したいのは、次のような支出です。
- 使い切れていないサブスク
- 効果が薄い広告出稿
- 稼働率の低い外注契約
- 利用頻度の低いリースや保守契約
- 慣習的に続いている経費
ここで大切なのは、全部を削ることではなく、
今の資金状況に対して優先順位が低い支出を止めることです。
おすすめは、支出を次の3つに分ける方法です。
| 分類 | 内容 | 対応の考え方 |
|---|---|---|
| 絶対に必要 | 給与、家賃、税金、最低限の仕入など | 原則維持 |
| 続けたいが調整可能 | 広告、外注、業務委託、ツール類など | 減額・一時停止を検討 |
| 今すぐでなくてよい | 低優先の投資、慣例的支出、未活用サービスなど | いったん止める |
この仕分けをするだけでも、
「削ってはいけないもの」と「すぐ見直せるもの」が分かれ、判断しやすくなります。
設備投資や採用のタイミングを調整する
数字が悪化した月は、前向きな支出でもタイミングを見直すことが大切です。
特に設備投資や採用は、長期的には必要でも、短期の資金繰りには重くのしかかることがあります。
たとえば、次のような判断は有効です。
- 今月導入予定の設備を翌月以降にずらす
- 一括購入ではなく分割や代替手段を検討する
- 採用を急がず、外注や業務整理でつなぐ
- 効果が出るまで時間がかかる投資は再点検する
ここで気をつけたいのは、必要な投資を全部止めることではありません。
あくまで、資金が薄い時期に重ならないよう、支出の山をずらす発想が大切です。
判断基準としては、
- 今すぐやらないと売上に直結して困るか
- 回収までに時間がかかりすぎないか
- 今の手元資金で無理なく吸収できるか
の3点を見ておくと、無理な意思決定を防ぎやすくなります。
売掛債権の早期資金化を検討する
月次で見て「数週間〜1か月ほど先に資金が薄くなる」と分かった場合は、
売掛債権の早期資金化を選択肢に入れるのも一つの方法です。
これは、すでに発生している請求書や売掛債権をもとに、入金日より前に資金化を図る考え方です。
特に、売上は立っているのに回収サイトが長い会社では、資金繰りの谷を埋める手段として検討しやすい場面があります。
ただし、重要なのは、
恒常的な資金不足を毎回これで埋めることではありません。
本来は、
- 回収条件の見直し
- 支払い条件の調整
- 固定費の整理
- 投資時期の調整
を進めたうえで、一時的な不足をつなぐ手段として使うほうが健全です。
たとえばファクトルを比較候補に入れるタイミング
たとえば、次のような場面では比較候補に入れやすいです。
- 大口入金は確定しているが、入金日まで資金が持たない
- 税金や賞与など、一時的に支払いが重なる
- 仕入れや外注費の先行で一時的に現金が薄くなる
- 銀行融資の実行まで時間がかかる
- まずはWebで早く比較・申請したい
ファクトルは、公式案内上、必要書類2点・Web完結・最短40分・手数料1.5%〜が特徴として示されています。
そのため、急ぎで比較したい場面では候補に入れやすい一方、実際には自社の請求書内容や希望条件に合うかを個別に確認することが大切です。
手数料だけでなく必要書類・入金スピード・使いやすさも確認する
こうしたサービスを比較するとき、手数料だけで決めるのは危険です。
見ておきたいのは、少なくとも次の点です。
- 必要書類は何か
- オンラインで完結するか
- 審査から入金までのスピード感
- 追加費用の有無
- 対応可能な請求書の条件
- 使い勝手や申請のしやすさ
とくに資金が厳しいときは、
安さだけでなく、間に合うかどうか
も重要になります。
そのため、比較の際は
手数料 × スピード × 手続き負担
の3点で見ると判断しやすいです。
金融機関への相談は残高が尽きる前に始める
資金繰りが苦しくなったとき、最後に慌てて相談するのでは遅いことがあります。
金融機関への相談は、残高が尽きる前に始めるのが基本です。
理由はシンプルで、余裕がある段階のほうが、
- 資金計画を説明しやすい
- 必要書類を整えやすい
- 複数の選択肢を比べやすい
- 条件交渉もしやすい
からです。
逆に、残高がほとんどなくなってからでは、
- 焦って判断しやすい
- 必要資料の準備が追いつかない
- 相談先が限られる
- 条件の悪い方法を選びやすい
という状態になりがちです。
月次で数字が悪化したときは、まだ回るうちに
- 3か月程度の資金繰り見込み
- 売上と回収の見通し
- 支払予定の一覧
- すでに打った改善策
を整理しておくと、相談が進めやすくなります。
資金繰りの相談は、困り切ってからではなく、危険サインが見えた段階で始めるものです。
この意識があるだけでも、資金ショートのリスクはかなり下げられます。
月次管理を続けるためのシンプルな運用ルール
月次管理は、立派な表を作ることよりも、毎月続けられることのほうが大切です。
最初から完璧を目指すと、確認項目が増えすぎて続かなくなりやすくなります。
資金ショートを防ぐための月次管理は、
「細かく分析する仕組み」ではなく「異変に早く気づく仕組み」
として作るのがおすすめです。
ここでは、初心者でも続けやすい、シンプルな運用ルールを4つに絞って解説します。
毎月同じ日に数字を確認する
月次管理が続かない大きな理由のひとつは、確認するタイミングが毎回バラバラになることです。
忙しい月は後回しになり、気づけば2か月分まとめて見るようになってしまうと、月次管理の意味が薄れます。
そこでおすすめなのが、毎月同じ日に確認するルールを先に決めることです。
たとえば、
- 毎月5営業日に前月実績を確認する
- 毎月10日に今月の着地見込みを更新する
- 毎月20日に翌月の資金予定を確認する
というように、確認日を固定すると習慣化しやすくなります。
ポイントは、「時間が空いたら見る」ではなく「この日に見る」と決めることです。
日程が決まっていれば、資料の準備もしやすくなり、確認漏れも減ります。
また、毎月同じ日に見ることで、数字の比較もしやすくなります。
前月との差や、見込みとのズレが分かりやすくなり、異変にも早く気づけます。
📌 月次管理は、内容の難しさよりも、確認のリズムを固定することで続きやすくなります。
見る項目を増やしすぎず重要数字に絞る
月次管理を始めると、「あれも見たほうがいい」「この数字も必要そう」となりがちです。
ただ、確認項目が増えすぎると、見るだけで疲れてしまい、結局続きません。
最初に絞りたいのは、資金ショートの予防に直結する数字です。
たとえば、初心者のうちは次の7つ程度でも十分です。
- 月末の現預金残高
- 今月の入金予定額
- 今月の支払予定額
- 3か月先までの予定資金残高
- 売掛金残高
- 固定費総額
- 借入返済額
この程度でも、資金が減る流れはかなり見えてきます。
逆に、最初から細かい補助科目や分析指標を増やしすぎると、
作ることが目的になり、判断に使えなくなることがあります。
月次管理で大切なのは、情報量の多さではなく、
「危ない月が見えるかどうか」 です。
そのため、迷ったときは
この数字は、資金ショートの早期発見に本当に役立つか
という基準で残す・外すを決めると整理しやすくなります。
最初は少なく、必要になったら後から足す。
このくらいの考え方のほうが、長く続けやすいです。
経営者が15分で確認できる一覧表を作る
月次管理が続く会社は、数字が整理されていて、短時間で全体を見渡せることが多いです。
反対に、資料がバラバラだと、確認に時間がかかり、判断も遅れます。
おすすめなのは、経営者が15分程度で確認できる1枚の一覧表を作ることです。
完璧なフォーマットでなくても構いません。
まずは、次のような項目が1ページに収まっていれば十分です。
| 項目 | 前月 | 今月見込み | 来月見込み |
| —– | -: | —-: | —-: |
| 現預金残高 | | | |
| 入金予定額 | | | |
| 支払予定額 | | | |
| 差額 | | | |
| 売掛金残高 | | | |
| 固定費総額 | | | |
| 借入返済額 | | | |
この形にしておくと、
今どうか
今月末どうなりそうか
来月は危ないか
が一目で分かります。
一覧表を作るときのコツは、数字を詰め込みすぎないことです。
色分けやメモ欄を使って、
- 大きくズレた項目
- 来月に注意したい支出
- 入金遅れがある取引先
などを簡単に書けるようにしておくと、実務で使いやすくなります。
大切なのは、会計資料としてきれいに見せることではなく、
見た瞬間に動くべきポイントが分かることです。
税理士任せにせず意思決定に使う数字へ変える
月次の数字は、税理士や経理担当がまとめてくれることも多いです。
もちろん、それ自体は良いことです。
ただし、資金ショートを防ぐという意味では、作ってもらった数字を経営判断に使える形へ変えることが重要です。
よくあるのは、
- 試算表は毎月出ている
- でも経営者はざっと眺めるだけ
- 入金予定や支払予定は別で管理されている
- 結局、意思決定に数字がつながっていない
という状態です。
これでは、資料はあっても、月次管理が機能しているとは言いにくいです。
経営者が見るべきなのは、会計の細かいルールそのものではなく、
次の判断につながる数字です。
たとえば、
- 来月の資金は足りるか
- どの支出を調整するべきか
- 投資を今月実行してよいか
- 取引先の回収遅れがどれくらい響くか
- 金融機関へ相談を始めるべきか
こうした判断に使えるように、月次資料を少し変換しておく必要があります。
そのためには、税理士から受け取った試算表をそのまま終わりにせず、
- 現預金残高
- 入金予定
- 支払予定
- 借入返済
- 来月以降の見込み
まで並べて見る習慣を持つことが大切です。
税理士は数字を整える専門家ですが、
その数字を使って決めるのは経営者です。
だからこそ、月次管理は「報告を受ける作業」で終わらせず、
意思決定のための確認時間として位置づけるのがおすすめです。
まとめ
資金ショートを防ぐ鍵は“利益”より“先回りして現金を見る習慣”にある
資金ショートを防ぐうえで本当に大切なのは、
「今月いくら利益が出たか」だけを見ることではありません。
重要なのは、毎月の数字から
「来月、再来月にお金が足りなくならないか」
を先回りして確認することです。
売上があっても、入金が遅れれば現金は増えません。
利益が出ていても、支払いが重なれば資金は苦しくなります。
つまり、会社を守るのは損益計算書の数字だけではなく、実際に動く現金の流れです。
そのため、月次管理では次の視点を持つことが大切です。
- 月末の現預金残高は十分か
- 入金予定と支払予定はかみ合っているか
- 3か月先まで見て危ない月はないか
- 売掛金、固定費、返済負担が重くなっていないか
- 数字が悪化したときに早めに手を打てているか
こうした確認を毎月続けるだけでも、
資金ショートのリスクは大きく下げられます。
特に初心者のうちは、難しい分析を最初から完璧にやろうとしなくて大丈夫です。
まずは、「利益を見る習慣」から「現金の先行きを見る習慣」へ切り替えることが第一歩です。
月次で数字を見る目的は、資料を作ることではありません。
危ない月を早めに見つけ、余裕があるうちに動くことです。
この習慣が身につけば、資金繰りは感覚ではなく、数字をもとに判断できるようになります。
結果として、焦って不利な資金調達をしたり、支払い直前に慌てたりするリスクも減らせます。
資金ショートを防ぐ鍵は、
利益の大きさそのものではなく、現金の流れを先回りして見る習慣にあります。
毎月一度でもよいので、
「今いくらあるか」
「いつ入るか」
「いつ出ていくか」
「その結果、来月に足りるか」
を確認する時間を作ってみてください。
その小さな積み重ねが、会社のお金を守るいちばん現実的な方法です。
